| 「3現主義」を提唱、技術の伝承が重要に
口火を切って話題を提供したのは独立行政法人の河野広隆氏。「コンクリート構造物の維持管理に要する費用を推定しようと実際にトライしてみたが、非常に難しいことがわかった。一つの理由は将来のシナリオがなかなか描けないことだ。予測できるのは塩害だけで20〜30年後には2000億円という数字が一応算出されている。塩害対策の維持管理費は、極端なケースでは初期コストと同じか、それ以上にかかってしまう。そのため早い段階で対策を講じるか、初期コストを少しアップさせて対策を講じるのが非常に有効だ」と説明。
一方、アル骨被害などは「予防保全しようにも具体的な計画が立てられない。シナリオさえ描ければ、インフラ全体の合理的なマネジメントが可能になるということで各種の調査研究が行われており、今後の重要なポイントだ」という。
また、「現場ではいろいろな劣化原因でコンクリート構造物が痛んでいる。しかし、その現場まで行って実物を見、触れて診断するといったことが非常に少なくなっているように思う。JRやJH等ではきちんと対処されているが、一般には難しいことだと思われ、改めて3現主義を提唱したい」とし、コンクリート構造物を適宜診断できるようにするため、各地に総合病院、主要拠点に専門病院を配置するようなネットワークづくりも一案だと語った。
次いで日本建築総合試験所の田村博氏は「塩害やアル骨等によるコンクリート構造物の被害が関西では多い。各現場では一定の手順に従って診断し、補修補強工事を行うにしてもきちんとマニュアルを整備し、施工者の教育訓練にしても工業会等が協力し一定の技術レベルで実施されていると理解しており、建築物は社会的な批判を受けるような状況にはないと感じている」と述べた。
コンクリートに微細なひび割れがあっても困るため、雨漏りを防止するため被覆もしており、土木よりは緩やかな環境下にあり、劣化外力は小さい。特段問題もないようにみえるが、「試験所の立場で考えると実際に現場まで出向き、外力を受ける個性を持った材料、施工方法などを明らかにし、何年経ったらこういう状況になるという、トレーサビリティのあるデータ取りが必要であり、大切な役割だ」という。
また、補修技術に関しては「建築は被覆材によって劣化外力を排除しているが、必ずしもいいことばかりではない。コンクリートの微細なひびわれは劣化の兆候として警告になるが、被覆があると見えない。その意味でモニタリング技術を注視する必要がある。他方、電気防食技術は塩害、鉄筋の腐食を根本的に解決する唯一、信用できる方法だということが北米で結論として出ている。本格的でなくても、局所に適用できる電気防食の簡易な方法も大切な技術要素だ」とした。
続いてジェイアール西日本コンサルタンツの北後征雄氏が登壇し、「維持管理には構造、材料、施工方法など様々な技術が必要で、補修補強工事には専門的な化学や電気の知識が要求される。また、劣化損傷の原因を調べる上で対象構造物が構築された当時の設計・施工方法がわかることが絶対必要であり、将来の維持管理を考えていく上で技術の伝承が大変重要だと思われる。現在も設計方法は性能照査型へと変わりつつあり、耐震設計法も難しくなっている。どういう形で設計、施工されたのか、建設技術の変遷をきちんと伝えていくことが大切だ」とし、維持管理の今後を考える上で技術者の育成が非常に重要だと語った。
従来は建設技術者がそのまま維持管理技術者になっていたが、「新しく建設することが少なくなり、施工経験のない人が維持管理業務を担う形になっている。そこで建設技術者との交流も意識的に努めているが、十分といえない」と述べた。≫(中)へ続く
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