失敗事例集めることが大切
コンクリート材料を提供、セメントの役割高い
大林組の小柳光生氏は「一般環境下における建築物は10〜20年も経過すれば、用途変更や仕上げ材の陳腐化を理由に改修工事が行われる。その時に躯体コンクリートも見直され、不具合があれば補修することになる。98年以前に建設された建築物は耐震性能が相当落ちるものが多いため特に公共工事を中心に耐震補強工事が行われている事例がある。まだ件数は少ないものの、大都市では既存の地下を再利用し、耐久性を向上させた上でそのまま供用し、上の建築だけ新しくするケースがあり、増えてくる傾向にある」と現状を紹介。
調査診断技術については「基本的には土木構造物と同様と思うが、竣工後1〜2年は定期点検される。建築の場合、以降も施主によって絶えずチェックされており、体力劣化は少ないと考えられる」とした。「目にみえる大きなひび割れは減っているが、幅0.3ミリ以下のひび割れはなかなか無くならない。補修材も各種開発されているが、施工後に跡を残さないような、美観をキーワードにした新しい材料が今後要求されていくだろう」「中性化についていえば構造物自体にそれほど悪さは顕在化していないものの、劣化が非常に進んでいるケースが多い。かぶり厚不足で補修せざるを得ない場合、多用しているのがポリマーセメントモルタルだ。吹きつけ塗装による中性化抑制も考えていく必要がある。当社が開発した断面修復材は沈降せずに、流動性がよく、強度が出る。3拍子揃っており、キーワードは安価なことだ」。
今後の課題では「補修補強のガイドラインも必要で、より内容の充実を図る必要がある。失敗事例も数多く集めることが大切だ。近年は多種多様な補修材料が市場に出回るようになったが、目的・要求に合致し、費用対効果のある材料の評価手法がきちんと確立されるよう望みたい」とした。
続いて、セメント協会が4月に技術委員会に新設したコンクリート補修専門委員会を代表してパネラーをつとめた富田六郎氏は、“無機系補修材料の現状と課題”をテーマに、特に断面修復材を重点に話題を提供した。
コンクリート構造物の劣化原因には塩害、中性化、アル骨反応、凍害など様々なものがあるが、基本的には化学反応が関与している。また、コンクリートを構成する主たる材料を供給している関係もあってセメント会社に出番が回ってきた。
維持補修のためには劣化原因を推定し、補修材や工法を分かりやすく、スムーズに選択できる仕組みを考えていく必要があるが、セメントメーカーであれば材料はいろんな種類を提供でき、コンクリート技術は全体をリードする存在だ。分析、評価技術、さらには劣化原因を推定する方法も各社がノウハウとして持つ強みがある。
コンクリート補修専門委員会の活動機関は2年の予定で、11社が参加している。具体的には発注サイドの補修材に関する要求性能の調査を行うほか、劣化条件に対応した補修材モデルの作成、補修材に関する講習会・PR資料の作成などを計画している。「補修材には様々な製品があるが、当面は無機系の断面修復材に絞って活動したいと考えている」という。
断面修復は大別すると左官工法、吹付工法、型枠を使っての現場打ちなど、劣化の程度や規模によって各種の工法が選択されている。いずれも機械化施工できる部分が少なく、施工者の技能にかなり頼っているのが補修工事の特徴とされる。また、補修材料は多種多様な物がある。断面修復に求められる材料の性能は一番に作業性で、天井への付着にも耐えるものでないといけない。
一方、国交省や日本道路公団など事業主体たる各公的機関によって、材料に求める性能は個々に異なっている。最大公約数的な要求として規格などが決められているわけだが、スペックや試験方法、規格値にかなり差がある。「そうした実情を詳細に調べあげて整理した上で、試験方法を統一できないか、あるいは同じコンクリート構造物であればスペックもある程度揃えられないか、ということが委員会活動のこれからの課題になるだろう」と述べた。≫(下)へ続く
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