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第58回セメント技術大会パネルディスカッション「維持補修は今」(下)
 予防保全が重要
 補修材の性能評価も課題

 5人のパネラーが話題を提供したあと、東京大学生産技術研究所の魚本健人教授がコーディネーターとなってパネル討論が行われた。

 魚本氏は「LCCとかいわれるが、実際この材料を使えばどれくらい満足し、その状態がいつまで続くのか。例えば山陽新幹線は一体何年持たせようとしているのか、よくわからない。また、構造物の寿命がつきたという状態は何を指すのか。私の知る限り、寿命がつきたからコンクリート構造物を取り替えたという例はあまりない」と、問題を提起。

 これに北後氏が鉄道の維持補修の観点から見解を述べ、「河川の幅を広げたいが、それまでの橋脚が邪魔になるとか、道路を2車線から4車線に拡幅するなど外的要因から、鉄道の路線を取り替えたという例はある。そういう場合を除けば物理的に100年以上鉄道として十分機能している。ただし、何をもって寿命が尽きたとするのかわからないが、補修をすることで何年寿命が延びるかわからないまま、走りながら考えているというのが実情ではないか」と語った。

 河野氏は「寿命が尽きて替えたというのは塩害構造物だけ。最近はコンクリートクライシスというか、コンクリート構造物は長持ちしないという論調もあるが、橋梁の例をみても供用を開始して50年経過しているのに、なんら補修・補強が講じられていない構造物がある」と述べた。魚本氏は「基本的には構造物として十分機能し、耐久性も持ちあわせているが、社会的機能もしくはその他の理由によって取り替え等が起こる。それ以外はほとんどない。使えるギリギリの所で使っていればいいとなると、補修・補強といのはそう真剣に考えなくていいということになるのではないか」「どういう状態になったら新品に取り替えないといけないのか。放っておいたらこの時期まで持つが、これぐらいコストがかかる、だから予防保全的に事前に投資するとメンテはこうなるというベースの部分が理解できずに対策が考えられているのではないか」と疑問を投げかけた。

 河野氏は「塩害によって橋梁は40〜70年で壊れるとすると毎年2000億円程度の補修費を要する計算だ。予防保全を講じて倍の80〜100年に延命できれば費用を1ケタ減らせる計算だ」とし、予防保全の必要性を強調するとともに、「寿命を考える上で第三者被害が大きな要素になるのではないか。コンクリートのひびわれに伴う剥離、剥落は、構造物にとって致命的でないが、第三者被害を起こすということで問題。被害を起こさないまでも安心感を与えることが大事だ」とし、第三者被害がキーワードになると語った。

 このほか、会場の参加者に発言を求めたり、意見交換を行った上で魚本氏が議論を総括し、「構造物をいつまで供用するか一般にあまり考えていないようだ。JRは新幹線を100年以上持たせたい考えのようだが、設計者が50年なり100年持たせようと思っても、社会事情の変化や採算性等によってそこまで要求されなくなることが起こり得る。例えば鉄道のローカル線。乗客が少なく、1日数本しか運行できないなら、バスで代替輸送した方がよいということになる」「走りながら考えるのも一つの方向だろうが、それだけではすまない。セ協が委員会を立ち上げて、これから研究されるのは大変意義がある」と述べた。最後に、「補修・補強材の需要は一般に小口が多いが、個々の現場に最適な工法、材料を選定する際の性能評価手法の整備、試験方法や要求性能の統一化、施工技能者の認定制度の検討、などが当面の課題になる」と総括した。