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臨床的にアプローチ 池田道政構造物メンテナンス研究センター長にきく (2008 07/07)
 土木研究所は4月、道路橋の安全管理のための構造技術に関する総合研究機関「構造物メンテナンス研究センター(CAESAR)」を立ち上げた。今後、橋梁をはじめとする土木構造物の維持管理、長寿命化などの研究に関して、わが国において中心的役割を担うことが期待されている。センター長に就任した池田道政土木研究所理事に同センターの概要や今後の方針等について聞いた。

 ――センター設立の背景からお聞きしたい。

 池田氏 道路等の社会資本整備の重点が建設から維持管理へとシフトしつつあり、構造物の長寿命化や安全性確保には社会的関心も高まっている。これに対し、これまでも構造物の維持補修や品質管理などに関して、すぐれた研究が個別になされてきたが、これらを体系化し、科学的に裏づけを与える専門機関が必要という認識が高まり、当センターが設立されることとなった。
 今後、とくに診断や補修技術が十分に確立されていない案件や高度な技術力が要求される案件等に対応できるよう技術や情報を集積し、道路管理者らが容易に活用できる体制を整備することが、当センターの重要な使命だと考えている。
 対象とする構造物は、当面は橋梁がメーンとなるが、将来的にはより幅広い土木構造物にも対応していく方針だ。
 世界的にみても、構造物の維持管理について体系だった研究を行う専門機関はまだ少ない。世界レベルで研究を牽引する機関を目指したい。

 ――センターの特色や今後の方針について。

 池田氏 当センターの研究アプローチを「臨床研究」と呼んでいる。構造物は製造過程では部分の集積であり、設計理論など個別研究の積み重ねで構築される。一方、既存構造物のメンテナンスを考える場合、要素技術が複雑に組み合わさったものを相手にすることとなる。当然、理論や計算だけでは十分に対処できないし、実験によって確認したから大丈夫、というわけにもいかない。実物の構造物を対象に、地道な研究を積み重ねていく必要がある。
 このようなアプローチを実践するため、当センターでは独特な研究体制を採用している。通常、研究者は専門分野別にグループ分けされ、各自が細分化されたチーム等に所属するのが一般的だ。これに対し、当センターでは研究テーマごとに必要な専門知識を持った者が集まる体制を敷いている。研究者らの柔軟な連携を実現するのがねらいだ。

 ――今後期待される成果は。

 池田氏 技術開発や情報の集積を進める過程で指針やマニュアル等も作成することになるかと思うが、重要なのはこれらの成果が実際に活用されること。実在の構造物の研究から得られた知見に科学的分析を加え、それを実在の構造物のメンテナンスに生かしていくというのが基本スタンスであり、その具体的な適用事例が当センターの最大の成果になる。
 一方、優良構造物の研究も推進していきたいと考えている。維持補修というと、劣化した構造物とその修理というイメージが強いようだが、長期間にわたって健全さを保っている土木構造物等にも注目したい。100年単位で存続するような構造物はどこが優れているのか、その秘訣を探ることで今後のメンテナンス研究への大きな示唆を得られるのではないかと考えている。